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誉めることで本当に人材は育つのか?

こんにちは、ウダラです。

記事を読む前に、誰かがあなたを誉めてくれた体験を思い出してみてください。

どんな感覚があるでしょうか?


私の場合ですが2つのパターンがあります。

・一つは、嬉しくて、その人のためにもっと頑張ろうと思った。

・もう一つは、何を私に求めているのだろうと、疑ってかかる感覚があった。


読者のみなさんはどうですか?


さて、表題の「誉めることで本当に人材は育つのか?」ですが、結論から言うと、組織においても人材開発においても成長するために誉めることを必要とする組織は、自律成長型組織にはなり得ません。


具体的にみていきましょう。

誉めることを組織に取り入れようとすると、

・朝礼で、お互いの良かった点を誉め合ってからスタートする

・上司が部下に対するフィードバックの時間を作る

・社員同士て誉めるポイントを見つけ合ってグループでシェアする

・誉められたポイントで表彰する

など稚拙なものになりがちです。

自律成長型組織の模範とも言える人体の組織は37兆個もの細胞をもち、筋肉、骨、内臓などそれぞれの役割を担っています。その中でお互いにコミニケーションをとりながら協働し、生きると言う意図のために驚くべきチームワークをとっています。

会社組織は、単細胞ではなく、多細胞である人間の集まりなのだから、お互いの結果を承認し合うことは必要だというご意見もあるかもしれませんが、本当にその必要があるのでしょうか?

そこで、頻繁に使われるようになってきた承認欲求とは何かを知っておく必要があります。日本社会で使われている「承認欲求」は、「愛と所属の欲求」との混同があるように感じます。

マズローの7段階欲求では、愛と所属の欲求は、love & belong needs 。そして承認欲求は esteem needsとなっています。esteem エスティームとは、尊敬する、尊厳などの意味があり、日本で使われているように単に認められたいと訳してしまうと元のマズローの理論からは、ズレてしまうように感じます。

他人から認められたい、愛されたい、受け入れられたいという欲求は、むしろ、「愛と所属の欲求」の段階なのです。エスティームとは、尊敬されたいという欲求で、自分を誇れる感覚が内側から感じられる状態をセルフエスティームといいます。


ただ、成功している人でも、自らの成果に対して誇りを感じられる人はどれほどいるでしょうか。どんなに成功しても自分を受け入れられない、自分を認められない成功者は意外にも多いのです。


近年、承認欲求ブーム?!が起こり、次にやってくるのは自己実現欲求の時代だと言う意見を目にします。

競争に勝つことが重要視される日本社会において、今、ここで先を急ぐ前に、愛され、繋がりを感じられる感覚を取り戻すことの方が優先されるべきなのではないかと感じています。

愛されている、受け入れられているという感覚は、受けとる側がその感覚を受け入れ、感じられなければ、どんなに誉められても、決して満たされることはありません。


私は、誉められても受け取れない人を何人も見てきましたし、極端に言えば、1,000回誉められたとしても受け取る側が安全な感覚を感じられていなければ、聞こえていない、または、嫌悪感を感じているケースさえあります。


さらに言えば、人材育成に10年以上関わってきて、誰かに認められたいという感覚は、競争社会が作り出した欲望と言えるのではないかと感じています。問題なのは、誉められたいという感覚は、満たされると満足感を感じられる承認欲求とは異なり、どこまでも際限がなくなる性質を持つということです。

この性質を踏まえて、誉めることで起きるデメリットとして、書き加えておきたいのは、

・誉められたい人の行動は、過激になっていく

・意図が明確でない場合は、誉められても受け取れない

・誉める側が誉められる側の言動・態度を支配できる

などがあげられます。

組織の中で人材が自律的に成長していくために最も重要なのは、そこに存在する「個」が協働し合える共通の意図です。ただ、組織の成員となる一人一人は、単細胞ではないので、37兆どころか、2人だけでも集まれば方向性の相違が起きます。


そして、実際、「お金のため」「夢実現のため」「なんとなく」など、それぞれが別の違った意図を持ち込んで組織に属しています。


組織の人材育成という観点からみると、

「誉めることで人材は伸びるのか?」と言う問い自体が機能しないものであることがわかります。

むしろ、

「人が誉めなくても、自主的に成長させている能力・強みは何か?」

「誉めなくても、本人が甲斐を感じられることは何か?」

という問いが個々の能力を伸ばす問いになるのだと思います。


言い換えれば、組織全体の成長のプロセスを通して、個々がそれぞれの才能を伸ばし、甲斐(KAI)を見い出せるどうかが組織を自律的に成長させていく鍵になるということです。


最後まで読んでくださって本当にありがとうございました。

次回は、本人が誰に頼まれることもなく、自ら行動するためにどんな会話が機能するのか。


機能する会話のコツについても書いていきたいと思います。

こちらも合わせてご覧ください。


子どもを誉めるときにやってはいけないこと6つのこと


承認欲求、愛と所属の欲求 動画



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